2月2日

 「西炯子って知ってる?もう20年以上前にデビューした漫画家さんなんだけど、おれ、その人の『水が氷になるとき』って作品が本当に好きで。で、そこから5年くらいの作品は本当に大事に読んでて、でもなんだろう、ぱたっと読まなくなったのね。で、気まぐれでさ、現在進行系で連載してる『姉の結婚』っていう作品を買って読んでみたんだけど…もう、目が点になった。20年前のあの、自分の才能に振り回されることをケラケラと楽しんでいるような、あの瑞々しさは完全に消え失せ、そこには漫画に対する執念と、情熱と、努力と、惜しみない愛情があった。大リーグボールみたいな漫画だと思った。才能なんてのは、「一瞬の気の迷い」みたいなものだ。それをいつまでも引きずっていたら、生活なんて出来ない。人はここまで変われるのだと思った。現在、なんと西先生は7本の連載を抱えている。少女漫画家としてはトップクラスの生産量だろう。いや、生産するだけならともかく、今、『なかよし』にて連載中の『恋と軍艦』(!)は1巻しかまだ出ていないものの、10万部の超絶ヒット作となっている。13歳の少女が40歳の中年にゲイ疑惑を抱きながらも恋をする、とか、この攻めっ気!おれが知っていた西炯子はもう居ないのかもしれない。でも、おれがこれから知りたくてしょうがない西炯子は、確実に今、この時代を全力で駆け抜けていてくれているんだよね」