2月12日

ぼくが人生で一番チョコレートをもらったのは、
2004年から2007年。歌舞伎町のセクキャバの主任をしていた頃だ。
店の女の子全員、とは言わないまでも、8割。在籍が40人くらいだったので、30個くらいは貰ったような気がする。
もちろんその中の殆どがギリチョコなわけだけれど。
やがてあっというまに3月がきて、今度はお返しする番となる。
いちいち女の子によってモノを変えるのは面倒だし、余計な勘ぐりや諍いを招くことになるのが目に見えているので、一律同じものにした。
ミンティア、10個セット。
うちは普通のキャバクラと違い、お客さんと女の子がキスをする。だから、フリスクミンティアのような、ブレスケアタブレット系のお菓子は女の子にとって必需品なわけで、当然喜ばれる。

お店が終わって、清掃をはじめる。
ソファをひっくり返すと、誰かがこぼしたタブレットがたくさん転がっている。
絨毯にまぎれてなかなかそれはみつけづらいのだけれど、
そんな時は、ブラックライトをつけるといい。
薄暗い証明の中、タブレットがまるで星空のように浮かび上がるのだ。
ぼくは戦争のような営業時間のあと、この星空を見るのが、いつのまにか楽しみとなっていた。

ホワイトデー直後は、いつもよりも星の数が多かった。

煌く星を口にしのばせ、歌舞伎町の雑居ビルでキスをくりかえしていた彼女たちは、一体今、どこで何をしているのだろう。そしてぼくは、彼女たちに今、なんと言いたいのだろう。ありがとう。なのか。ごめんね。なのか。いや、今の気分は。
おれは元気にやってるよ。かもしれない。