9月25日

 10年以上前の話なんだけども、どういう流れだったのかは覚えてないんだけど、とにかくおれが、「タクシー運転手っていいよね。お客さんを乗せて、夜の街を走ってさ。結構なりたい職業の一つかもなー」とか言ったわけ。そしたら母親が、「そんなことさせるために大学行かせたわけじゃない」みたいなことを言って、正確には言いかけて、やめたのね。おれもうその時すっげえいろんなことが伝わってきちゃって。母親がもつ差別心とか、そういうことじゃなくてさ。いや、大学きっちり出てタクシーの運転手になるってのは、別に悪いわけじゃないけど効率的でもないじゃん。そんなのは誰でもわかることだし、それについてはどうも思わないんだけども、でも、その差別心をさ、子供に伝えちゃいけない、と思ったわけじゃん母親は。効率よりも道徳を重んじたわけだよね。もう完全にさ、カードのきり間違いじゃん。ちょっと油断しちゃってさ、セオリーと違うカードをきってしまった。そこから産まれた、今までなかった親子の関係性というかさ、そういうものにすっごくドキドキしたんだよね。
 おれもいつかは子供を作るのかな。
 おれは子供に、どんな世界観をもって接するのだろう。